『コロナ以後の世界』

 現在、新型コロナウイルスの感染防止により、人々は切り離され、独立した「個」として振る舞うことを強いられています。これまで当然だった集まりや近いコミュニケーションが出来ない状態です。このような日常とは違う状態を「非日常」と考え、早く前の状態にも戻らないかなと考える。
 しかし、もし今回の新型コロナウイルスが、10年単位で世界中に留まるとするならば、ある程度は人と人との「距離」を保つことは、日常になるかもしれません。そうした姿勢で「新しい社会構造」を作る方が、もし新たなウイルスが発生したときには安全です。さらにお互いを変に拘束しあうような関係も、正常化されていくはずです。

古賀ヤスノリ イラスト

 ウイルスの全容が把握されていない現在、これまでのような確率論で未来予測することは難しくなっています。今のところ、「これまでの生活」に成れている私たちは、以前の生活へ戻るだろうと無意識に感じ、また願ってもいます。しかし、世界史的に見れば、大きな疫病が蔓延した後には、必ず秩序体系の「刷新」が起こります。今回のウイルスの規模から推察すると、そうなる可能性が十分にあります。つまり元へは戻れない。以前大事だった価値観は、使えないどころか、逆に不利益を生むかもしれません。少なくともそう考えておくことで、次にくる「新しい世界」への有効な備えとなるはずです。

AUTOPOIESIS 0056/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

『遊びと人間』

古賀ヤスノリ イラスト

「遊びと芸術は生命力の余剰から生まれる」
(ロジェ・カイヨワ)

 ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」を着想に生まれた一冊。フランスの天才的評論家ロジェ・カイヨワによる「遊び」の徹底分析は、臨床心理学の分野にも活かされるほどの実践的な内容。遊びを「競争」「運」「模倣」「めまい」の四つに分類する。さらに「模倣」と「めまい」の結合が人間を原始的な状態にとどめ、その世界を断ち切り「競争」(才能)と「運」(挑戦)の結合世界を作ることが文明への道だとする。原始的な「模倣」と「めまい」が“仮面”によって結合するというくだりは、統合失調化する現代を一言で表している。決してホイジンガの「模倣」ではない、まさに文化遺産的な一冊。

book / 026『遊びと人間』ロジェ・カイヨワ: Originally published in 1958
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『isonomia』

『ホモ・ルーデンス』

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「遊びの精髄は、なんといっても規則を守ることである」
(ヨハン・ホイジンガ)

 この本は「遊びは文化よりも古い」という書き出しではじまる。「遊び」を歴史的、文化人類学的な視点から考察した内容は、この本から派生したフランスの『遊びと人間』(ロジェ・カイヨワ)より断然“面白い”。遊びはイメージを心の中で操ることからはじまり、利害関係を離れた行為として発達していく。規則の発生と反復可能性は、競技や戦争、裁判などの元型として今も機能し続けているという。人間の“楽しさ”の源泉となる「遊び」の基本原理が、規則を“自発的に”受け入れることにあるとする本書は、アクチュアルな幸福論として読むことも可能な名著である。

book / 025『ホモ・ルーデンス』ヨハン・ホイジンガ: Originally published in 1938

古賀ヤスノリHP→『Green Identity』

『柔らかい個人主義の誕生』

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「一定のしなやかさを保ち、しかし、そのなかに有機的な一貫性を守ることが美徳とされる」(山崎正和)

 人間は目の前のものを早急に消費する動物段階から、消費を抑制し「貯蔵と蓄積」を目的とする生産活動(生産する自我)の段階へ。しかし貯蔵が目的化すれば際限がなくなる(現資本主義)。これに対し「消費する自我」は、消費を抑制しながらも、満足を引き伸ばしつつ楽しむ(消費する)。前者を支える自我を「固い自我」、後者を「柔らかい自我」とし、柔らかい自我による個人主義こそが、これからの時代に求められると説く。現代を予見した社会分析は鮮やかである。日本社会に適した個人主義を提案する、まさにこれからの一冊。

book / 024『柔らかい個人主義の誕生』山崎正和: Originally published in 1984
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Green Identity』

『音楽を語る』

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「芸術家と聴衆は、たがいに接近し接触してはじめて、一体となるのです」
(ヴィルヘルム・フルトヴェングラー)

 20世紀を代表する指揮者であり、クラシック界の哲学者と言えるフルトヴェングラー。彼の貴重な音楽理論を、対談形式で読むことが出来る。リストやワーグナーの時代より始まった「効果ばかりを狙う」ことへの批判。それに対してベートーヴェンが持つ、「非作為的な効果」への賛辞。その「作為なき創造」こそが、時代を超える言語だという。規格化された技巧は、芸術が持つ有機的なつながり(感情)を切断してしまう。内面的な必然性を強調する彼は、論理的でありながらも、やはり直感の人でもある。芸術の究極的なバランスが体感できる一冊です。

book / 023『音楽を語る』ヴィルヘルム・フルトヴェングラー: Originally published in 1952
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Greenn Identity』

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