『多様性のシステム』

イラスト  こがやすのり

 多様性の尊重。この新しいスローガンが建前上にしても一つの社会的な基準となりつつあります。しかしその多様性を真の意味で実現するには問題が山積しているようです。例えば、多様性とは個々の個性が尊重されることで実現しますが、現在の社会はいまだ均一化と平均化を志向しています。つまりみなに同じ能力を平均的に求める社会は、一行に変わる気配を見せない。多様性とはそれぞれの長所と短所の違いを認め合うことで成立します。つまりそれぞれに欠点の場所が違い、それらを適材適所で補う高度な秩序体系が多様性の社会です。
 画一化と平均化の社会から、適材適所の「相補的な社会」への移行には、成果主義と効率化という資本主義の要を捨てる勇気が必要です。成果主義と効率化は、すべてを平均化し画一的な管理を旨とします。例外を許容すれば、数字にバラツキが出てしまう。この意味において成果主義は短期的な結果に依存したシステムだと言えます。それに対する多様性のシステムは、短期的なバラつきを許容し、より長期的な安定を目指す構造です。
 短期的な成果を求めるには、例外をなくし、すべてを平均的で画一的に管理するのが一番です。しかし「資本主義の形骸化」による弊害が社会に噴出してきた今、やはり長期的な安定を作り出す多様性のシステムに移行する時期に来ています。その最初のステップが、お互いの欠点とその違いを認め合い、弱点を補い合う「適材適所」の概念を一般化することです。この相補的なシステムは、人体がもつシステムと同じものです。人体の各器官は重複せずにそれぞれの役割以外のことはできない。しかし全体的に驚くべき機能を果たしています。この意味で多様性の社会は、人体のシステム(私たち自身)が大きなヒントとなると考えられるのです。

AUTOPOIESIS 205/ illustration and text by : Yasunori Koga
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