『絵が上手くなる方法』

古賀ヤスノリ イラスト こがやすのり

 あの人は絵が上手い。そう言われる人の絵はまず技術的に上手い。つまり形を正確に描けるということです。これが一般的な絵の上手さの基準になっています。形の正確さはデッサンの訓練によって身につく。よってあの人は絵が上手いということは、デッサンが上手いという暗示があります。確かに形をそっくりそのまま正確に描く能力は、練習してもなかなか身につきません。その意味では凄いことです。しかし絵が上手いという基準はそれだけではありません。
 形ではなく雰囲気を表すことが上手い人、あるいは対象を省略して描くのが上手い人、さらには全てを自分の世界に変換するのが上手い人もいます。それらの価値基準は形の正確さとは別種のものです。そして形の正確な絵がそれらの絵よりも優れている訳ではありません。それは絵を見ることよりも実際に描くことでその素晴らしさが実感されます。つまり描く経験が豊かになればなるほど、形の正確さ以外の価値観が理解されていく。
 「絵が上手くなる方法」とは、デッサンだけではなくそれ以外の価値観も理解して洗練させる方法です。デッサンや形をリアルに描くことに固執すれば、それ以外の多くの側面がおろそかになる。つまり絵に関わる全ての側面をバランスよく訓練していくことで、形だけに片寄らない、絵ならではの印象的なイメージを描くことが出来るようになる。そしてそのイメージが自分自身でしか描けないものであるとき、その絵は他人にとっても魅力的なものになる。それら一連のプロセスを訓練していくことが、本当の意味での「絵が上手くなる方法」なのです。

AUTOPOIESIS 170/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

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