「ぼくにとって、そんなものがいったいなんの役にたつのかな!」
(アーサー・コナン・ドイル)
誰もが知るシャーロック・ホームズが世に出た第一作目。ストーリー自体は推理ものとして単純明解です。しかし、コナン・ドイルが作り出したシャーロック・ホームズの「情報処理の姿勢」は、情報過多の現代人に一つの指標を与えるもです。彼はあらゆる知識に通じた天才でありながら、その反面、一般人が知る当然の知識(常識)をまったく持っていない。地動説すら知らないという始末。彼は言います。「無用なものを覚えて、役に立つ知識を追い出さないようにするのは、じつにたいせつなことですよ」と。ネット社会での新しい「常識」を予感した、学ぶところの多い娯楽小説です。
009『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル: Originally published in 1887
illustration and text by : Yasunori Koga