『ゴーストライター』

古賀ヤスノリ イラスト

 元英国首相のゴーストライターであったマカラの自殺によって、あらたなゴーストライターに任命された主人公。アメリカ滞在中の首相の下で自伝に取り掛かるが、マカラが書いた初稿を探究するうちに、自分とマカラが不気味な重なりを見せ始めていく。
一国の首相の個人史から浮かび上がるストーリー。それは本人の意思を超えた、ある構造によって規定された物語なのか。首相の自伝という表向きの事実が暗示する「真の事実」とは。ゴーストライターという実態なき存在が表そうとするのは、偽装によって隠蔽された真実である。彼はそれを認識し得た瞬間、腐敗した政治の世界から解放される。ここにあるのは真のジャーナリズム。何もかもがパーフェクトと言える、数少ない映画である。

vol. 038 「ゴーストライター」 2010年 イギリス 124分監督 ロマン・ポランスキー
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『isonomia』

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