『逃亡者』
月並みなハリウッド映画は10年たてば古びて見れなくなる。しかしこの「逃亡者」は今見ても十分面白い。 なぜこの映画の賞味期限は切れないのか。その答えは、「無実の罪をはらす」という絶対倫理に訴えるストーリー。そしてトミー・リー・ジョーンズ(以下T・ジョーンズ)の熱のこもった演技に、時代を超えた普遍性があるからだろう。 特にT・ジョーンズ扮する連邦保安官ジェラードの活躍ぶりは見ごたえ十分である。のちにジェラードを主役とした映画が作られたほどだ。 無言の演技が冴えるハリソン・フォードも、この映画ではジェラードの引き立て役にすぎない。
監督はアンドリュー・デイビス。彼は以前にも「沈黙の戦艦」や「ザ・パッケージ」(これも地味だが面白い映画)で T・ジョーンズを起用しているが、どちらも悪役だった。この映画のヒットにより、T・ジョーンズは悪役が無くなっていくと同時に、スターへの階段を駆け上がっていくことになる。トミー・リー・ジョーンズというスターはこの映画から生まれたのだ。
vol. 002 「逃亡者」 1993年 アメリカ 131分 監督:アンドリュー・デイビス
illustration and text by : Yasunori Koga