『パードレ・パドローネ』
厳格な父の圧政によって抑圧状態にあった少年。かれは小学校から連れ出され羊飼いにさせられる。文盲のまま育った主人公は、やがて徴兵によって父親から解放される。そして言葉をむさぼるように覚えて行くのであった。
これはイタリアの言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝である。つまり主人公は文盲から言語学者になる! 家庭環境という前提条件から個人の人生を勝ち取るドラマ。これは全ての人間にとって共通のテーマである。そんな普遍的な物語を、ダヴィアーニ兄弟がザラついた質感とユーモアをもって描き出す。オイディプス神話の流れに乗って、ガヴィーノ少年は言語学者へと進んでゆく。まさに傑作である。
vol. 022 「パードレ・パドローネ」 1977年 イタリア 114分 監督 パオロ、ビットリオ・タヴィアーニ
illustration and text by : Yasunori Koga