「現在の病態が患者の人生にとってどのような意味をもっているのかを見極める」
(木村敏)
日本を代表する精神病理学者による論文集(1968年~1978年)。決して単純化しては語れない、分裂病(統合失調症)者についての臨床的な知識をこの本によって得ることができる。しかし前半には鬱病に対する重要な論文も収められているので、二つの病態の比較も可能だ。特に「分裂病と時間論」において展開される「ノエマ・ノエシス」の概念から把握される自己や、「‟前夜祭”と‟後の祭り”」といった分裂者の時間的病態の把握などは、明らかに哲学者としてのセンスがうかがえる。あまりにも貴重な経験と情報がが詰まった一冊です。
006『自己・あいだ・時間』木村敏: Originally published in 1981
illustration and text by : Yasunori Koga