「国家は幻想である。風俗や宗教や法もまた共同の幻想である」
(吉本隆明)
人間のあらゆる営みは共同の幻想で成り立っている。その幻想を「共同幻想」「対幻想」「自己幻想」の三つに分け構造を明らかにする。フロイトの精神分析を軸に、柳田国男の『遠野物語』から「幻想」の位相を取り出す手際がすごい。共同幻想は「禁止」により生み出され、その幻想は共同体の利益のために成立している。しかしどんなに表面的に高度にみえても、「禁止」によって成立する共同性は、未開的な世界であると吉本は言い切る。共同幻想は、現実と妄想の区別がつかない人々へたやすく「禁止」を吸い込ませる。これはまさに現代の社会状況にぴったりと当てはまる。少々難解ではありますが、見えない「社会的抑圧」を無効化する上で欠かすことのできない名著です。
003『共同幻想論』吉本隆明: Originally published in 1968
illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリHP→『isonomia』
日々の思考→『AUTOPOIESIS』
映画エッセイ→『Cinepheno』