『狼たちの午後』
銀行強盗に走る主人公。労働者階級の苦悩が引き金となって起きた事件は、少しずつ人々の共感を生んでいく。それは人質になった銀行員とて例外ではなかった。
格差が引き金となった事件があとを絶たない現代。この映画のメッセージは今なお威力を失っていない。実話に元づいた映画だけに、無駄を排した演出と、セミドキュメンタリータッチのカメラワークが効果的。のちに、この映画を着想とした映画が多数作られているという事実が、傑作であることを物語っている。エルトン・ジョンのオープニングソングが心に響いてならない。
vol. 008 「狼たちの午後」 1975年 アメリカ125分 監督:シドニー・ルメット
illustration and text by : Yasunori Koga