『裸のランチ』
ウイリアム・バロウズの同名小説の映画化である。小説のほうは、文章を無作為に切り取りとって繋ぎ合わせるカットアップという手法がとられている。 つまり意味不明な体裁をしているのだ。それを映像化しようという発想が凄い。監督のクローネンバーグは昔から、バロウズのファンだったようである。
映画のほうはカットアップではない(編集とはカットアップなのだが)。映像は琥珀色。オーネット・コールマンのサックスが気だるい空気を乱反射させ、その中を役者たちがまどろむ。
この世界観には賛否両論あるだろう。しかし映像のインパックトは大きく、今でも似たような質感の映画を見かける。バロウズ本人のエピソードが数多く盛り込まれてるので、「裸のバロウズ」というサブタイトルで親しみたい一品である。
vol. 009 「裸のランチ」 1992年 イギリス・カナダ117分 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
illustration and text by : Yasunori Koga