『ミラーズ・クロッシング』
禁酒法時代のマフィアの抗争を描いた、コーエン兄弟初期の傑作。 対立するアイルランド系マフィアとイタリア系マフィア。その間を飄々と渡り歩く主人公トム。そのクールさこそがこの映画の売りである。
時代を意識した世界観、特に美術が素晴らしい。曲者ぞろいの人間関係も実に見事に描かれている。 広角レンズで人物にズームするスタイルは、ジャン=ピエール・ジュネ がこの映画でヒントを得たのではあるまいか。 それにしても内容が黒澤明の「用心棒」にそっくりである。 コーエン兄弟なりのオマージュであることは、いまさら疑うまでもないだろう。
vol. 024 「ミラーズ・クロッシング」 1990年 アメリカ 115分 監督 ジョエル・コーエン
illustration and text by : Yasunori Koga