『ストリート・オブ・クロコダイル』

古賀ヤスノリ イラスト

 この作品はポーランドの作家、ブルーノ・ジュルツの「大鰐通り」を映像化したもの。朽ち果てた人形やネジ、ゴムたちが、命を宿したかのように動きまわる。幻想のようなしかしリアルな世界。この世界はクウェイ兄弟ならではとおもわれているが、実はシュルツの小説そのままと言ってもいいくらいだ。クエイ兄弟が以前からこの小説に影響を受けていたことがよくわかる。

人形をコマ撮りした、ストップモーションの映画なので全てが作り物。しかし、どこか現実以上に現実的なところがある。このような映像を芸術と呼ばずして、なにが芸術なのだろうか。

vol. 005 「ストリート・オブ・クロコダイル」 1986年 イギリス22分 監督:ブラザーズ・クエイ
illustration and text by : Yasunori Koga

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『カルパテ城の謎』

古賀ヤスノリ イラスト

 婚約者をさらわれたオペラ歌手テレック伯爵。その傷を癒すべく療養地として訪れた村で、人々から怖れられる「カルパテ城」の奇怪な噂を耳にする。興味を惹かれカルパテ城へ向かうテレック伯爵。その行く先で待ち受けるのは、婚約者をさらった奇人、ゴルツ男爵であった。

コメディー×(オペラ + 博物趣味 + SF)。これがこの映画を表す式である。ジュール・ヴェルヌの小説を下敷きにしているだけあって、地底、海底、宇宙のメタファーが、過去とも未来とも言い難い世界にちりばめられている。
この映画の見所は、主役のとぼけたオペラ歌手と、敵役であるゴルツ男爵の変人ぶりであろう。また美術を担当するのは、チェコのシュールレアリスト、ヤン・シュワンクマイエル。彼がデザインする奇妙な小道具の数々を見るのも楽しみの一つだ。監督のオルドリッチ・リプスキーは、つねに一風変わった世界を見せてくれるチェコ映画界の巨匠。 テリー・ギリアムやジャン・ピエール・ジュネの東欧版といったところか。この映画以外にも「アインシュタイン暗殺指令」や「アデラ、ニック・カーター、プラハの対決」が同じ傾向の傑作である。あの寺山修司やクローネンバーグ も愛したリプスキーの世界を、映画好きとして堪能しない訳にはいかない。

vol. 004 「カルパテ城の謎」 1981年 チェコ99分 監督:オルドリッチ・リプスキー
illustration and text by : Yasunori Koga

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『風がふくまま』 

 巨匠アッバス・キアロスタミ監督の『風がふくまま』を観る。
 ある特殊な葬儀を取材するため地方の村を訪れた主人公。彼は死の間際にある老婆の葬儀を待つ。仕事のために人の死を望む自分にうしろめたさを感じつつも、仕事を全うしようと努める。しかし予定に反して老婆は死なず、時間切れとなり企画も打ち切りとなる。それまでの使命から解放された主人公は、死を望んでいたはずの老婆のもとへ医者を案内する。

 人は目的に支配されると、他人の死を望むほど墜落する。その究極状態が戦争でしょう。映画の主人公は、ある支配から解放された瞬間から人間らしさを取り戻します。本来従うべきことが見えなくなる状態を、成果主義という病が作り出す。戦争を回避するヒントすら、この映画には隠されているのではないでしょうか。

AUTOPOIESIS 0053/ illustration and text by : Yasunori Koga
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『ローマ』

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 フェリーニの記憶とともに甦る“フェリーニのローマ“。それはイマジネーションの噴出の記録である。カエサルが渡ったルビコン川。そしてローマ行きの列車へ思いをはせるフェリーニ少年。彼はいつしかその列車にのってローマへと旅立つこととなる。

フェリーニの自伝的内容を、少年期・青年期・現代の三部構成で描いた記憶のカットアップ。フェリーニを巨匠にまで育てあげた街ローマ。その圧倒的なイメージの連続は、自伝的内容をこえてまさにファンタジー。自伝が幻想化していくような映画は、タルコフスキーやパラジャーノフの映画にもある。しかしその中にあってこのフェリーニのローマは特にエネルギッジュで心を熱くさせる。映画の中盤で自ら登場するフェリーニが、若者たちに語りかける言葉にこの映画の本質がよく表れている。「映画は理論ではない!」。映画が芸術であることを証明してくれる、映画史に残る傑作。

vol. 003 「ローマ」 1972年 イタリア120分 監督:フェデリコ・フェリーニ
illustration and text by : Yasunori Koga

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『逃亡者』

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 月並みなハリウッド映画は10年たてば古びて見れなくなる。しかしこの「逃亡者」は今見ても十分面白い。 なぜこの映画の賞味期限は切れないのか。その答えは、「無実の罪をはらす」という絶対倫理に訴えるストーリー。そしてトミー・リー・ジョーンズ(以下T・ジョーンズ)の熱のこもった演技に、時代を超えた普遍性があるからだろう。 特にT・ジョーンズ扮する連邦保安官ジェラードの活躍ぶりは見ごたえ十分である。のちにジェラードを主役とした映画が作られたほどだ。 無言の演技が冴えるハリソン・フォードも、この映画ではジェラードの引き立て役にすぎない。

監督はアンドリュー・デイビス。彼は以前にも「沈黙の戦艦」や「ザ・パッケージ」(これも地味だが面白い映画)で T・ジョーンズを起用しているが、どちらも悪役だった。この映画のヒットにより、T・ジョーンズは悪役が無くなっていくと同時に、スターへの階段を駆け上がっていくことになる。トミー・リー・ジョーンズというスターはこの映画から生まれたのだ。

vol. 002 「逃亡者」 1993年 アメリカ 131分 監督:アンドリュー・デイビス
illustration and text by : Yasunori Koga

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