物事に飽き飽きするという現象がときに起こります。同じ料理ばかり食べていると飽きてしまうし、同じ風景ばかり見ていると別の風景を見たくなるものです。このように人は同じ状況にたいして永遠とは耐えられない。経済学にインフレーションという概念がありますが、まさにありすぎて価値が下がってしまうということです。
ありすぎると価値が下落してしまう。別の言い方をすると、簡単に手に入るものや、一般化してしまったものには価値を見だせなくなる(これは「一般」に依存することの代償です)。あるいは誰もが手に入れているものに価値を感じない、というこのです。よってただで手に入るものは価値を見出せないし、大事にできない。いまや情報はネットで簡単に手に入るので、情報に価値を見出せない時代です。
逆に価値を見出せるものは「手に入りにくいもの」です。多くの人が持たず、入手するにはそれなりの物理的、心的なハードルがあるもの。つまり自分自身のインフレーションが起きにくい性質のものです。ゆえに一般化(形式化)しておらず捉えるのも難しい。つまり獲得するためにこちらの「考え方の変化」を要求するものです。入手に苦労すると共に、自分自身の個性とマッチするものがあれば、それこそ本質的に「自分にとって価値あるもの」です。ヤル気や面白さ、納得の源泉は、自分に合った“程よいハードル”(自分の価値)を発見し、それを受け入れることなのです。
AUTOPOIESIS 253/ illustration and text by : Yasunori Koga
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