摂動とは小さな惑星が大きな惑星の引力の影響を受けて運動が乱される現象をいいます。天体の場合は質量差が大きいと、小さいほうは摂動を受けます。この摂動は実際に押して影響を与えることと違うのがポイントです。これは物理学の話ですが、心理的にも同じ現象があります。そもそも離れたもの同士の「影響」とは平行関係では発生せず、つねにそこには大小差(サイズ比)があります。そしてもう一つは距離です。いくら大きい天体でも離れていればその引力に巻き込まれることはありません。
小さな天体の運行にとって大きな天体は危険な存在になりえる。そもそも惑星の誕生が、中心にできた引力が周囲の隕石を取り込んで、質量をあげていくプロセスをたどります。大きくなった天体は強力な引力をもちさらに周囲を取り込む。つまりその大きさは外部をからめ取ってできたものです。人間の世界では成功者にみえる証が「数」と思われている所と似ています。損得判断で動く人は、それに引き寄せられます。しかし確実に摂動に巻き込まれる。
摂動に巻き込まれると大きな天体の一部になります。この状態は自己逃避的な人には安心と誤認され、「精神的搾取」の構造ができます。摂動を利用する者がいる反面、自己放棄として摂動に身を任せる人もいる。もちろん摂動に抗う人もいます。たとえばアニメがヒットした漫画の原作者が、アニメの完成度から相対化を受けそれに耐える。摂動をうけるとバランスを崩し連載休業に追い込まれます。この摂動と搾取の構造を回避し、より適切な摂動の相互作用を作ることが望ましい。巨大で良質な引力が影響を与えつつも、小惑星を拘束しない関係(支配のない引力)が保てるなら、小惑星は摂動の力を借りて強力な力を宿すようになるのです。
AUTOPOIESIS 266/ illustration and text by : Yasunori Koga
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