『創造的転位⑤』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 創造性とは無意識を含めた「本当の自分」と、自分にとっての「意味のある素材」との化学反応のことである。それは既にあるものではない、新しい世界の誕生に関わること。自分自身がこの世界と関わり変化を続けている証でもあります。創造によって変化しながら進むことで、現状維持とは違った風景が流れ出す。流れることで時間が動き心も動き出す。そして動き出すものだけが未来へと続く道を歩むことができる。
 未来とは今現在知りえないものの総体です。つまり予測できたり、あらかじめ決定できるものは真の意味で未来ではありません。予定調和の外が本来の意味での未来。そしてその未来にしか咲かない花がある。この花は、今現在には咲いておらず、また過去にも咲いていない。その花がどんな花であるか今現在はわからない。創造性とのアクセスで、真の未来と繋がった道を歩むことでしか見ることができないのです。
 創造性は未来へ至る原動力であり、未来の花を咲かせる魔法のようなものです。今現在から観る「未来の花」とは個々人だれもがもっている創造力と、未来にしか発動しない希望や好奇心、積極性などが一体となって出来たイメージのようなものです。そのイメージはいつかきっと具体的な形となって現れる。もちろんそこに至るには、惜しみない努力や創意工夫、諦めない心なども必要です。逆にいえばそれらを要求する力を未来の花は持っている。その花に少しだけでも近づいてみたい、そういった気持ちが創造の始まり。そして創造的転位のはじまりなのです。

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古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

『創造的転位④』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 無意識から掘り出した「本当の自分」と、自分にとっての「意味のある素材」との間に創造が生まれる。ただの制作ではなく創造から生まれたものは、真の意味での「自分のもの」です。自分自身がいたからこそ、まだ世界に存在しなかったものが生まれた。それは誰に強制されたものでも、何かの模造品でもないもの。つまり創造によって制作されたものは、製作者がこの世に存在し、その存在が他の誰でもない「その人自身」であることを示しています。
 もし出来上がったものが未完成だったり気に入らなかったりしたとしても、そこには世界と自分自身とを繋ぐ決定的な証拠が存在します。ただの機械作業でも、他人のコピーでも、周囲への迎合で作ったものでもないのであれば、必ずそこには世界に対する「自己の存在証明」が示されている。この意味において失敗を否定する必要がなく、むしろ失敗と思えるものに、習慣の檻から解放してくれる新しい世界の扉が隠されている。
 創造性を発揮した表現を続けることで、それ自体が「普通のこと」になってきます。だんだんと既成のもの以外のものを作り出すことが当たり前になる。しかも自分自身の手で。現状維持ではなく前進と上書きが日常化すると、発展し伸びていくことがデフォルトになる。すると停滞する構造にも敏感になり、問題を未然に回避するようになる。枝葉を伸ばし止まることなく発展する植物のように、花咲く未来へと枝葉をのばしていく。創造性は未来の花を咲かせるための原動力であり、自分にとっての信頼できる道しるべなのです。
 最後は創造性によって生まれる「未来の花」とは何なのかについて考えていきます。

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『創造的転位③』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 暗黙の忖度や意識中心の考え方を退けることで、本当の自分(分裂の一切ない静寂な地点)が見えてくる。さらに本当の自分に化学反応をおこしてくれる素材との対話により創造性が生まれる。創造性へのアクセスによって現実は相対化され、ストレスからも開放される。もし本当の自分を発見しても、なにもしなければ新しい領域にアクセスすることはできません。
 そこで自分に意味のある素材やテーマを選び、それを試行錯誤しながら表現してく必要があります。問題は自分にとって「意味のある素材」です。本当の自分に関わるものを発見するには、忖度を排し無意識にあるものに従う必要があります。ここが難しい所です。普段なにかを選ぶ時は、意識的によく考え答えを出します。それが賢いやり方だと。しかし本当の自分は無意識に押し込まれており、無意識とは絶対に意識できない領域です。ゆえに数量化できる意識的データで判断すると本当の自分から離れていく。考えるから分からなくなる。この原理を前提として、まずは意識的なものの考え方を緩める必要があります。
 意識をゆるめた選別。それは明確さよりも、直感的に「何となく」引っかかるもの、理由はわからないが気になるもの、といった「理屈が辿れないがひっかかるもの」が無意識にあるものと関係している。意識的な分析はそれらを集めた後に行うというプロセスが重要です。そしてなぜ気になるのかを絵や音楽といった芸術表現やその他の活動によって追求していく。無意識のなかに沈んだ答えは簡単には出てきません。しかし「素材との対話」により必ず新しいもの(新しい自分)が生まれてくる。このプロセスこそが創造です。
 次回は本当の自分によって創造されたものが、自分自身に与える決定的な影響について考察してきます。

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『創造的転位 ②』  

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 創造性へのアクセスにより「現実を相対化」し後退させる。この方法は自分が後退して現実のストレスから逃れようとする「逃避」と似ていますが問題はありません。むしろ進化や思わぬ発展につながる良性の方法です。創造性へのアクセスに欠かせないのが「自分自身」という基盤です。これは思いのほか捉えるのが難しい。たとえば自分で選んでいると思っていても、どこかで世間の価値観や親の顔色をうかがっていることを忘れている。あるいは本音の行動には責任が付きまとうので、それを避けるために逆の行動すらとることがあります。つまり自分以外への「忖度」が「本当の自分を知る」邪魔をしている。
 問題は忖度だけではありません。人間には意識ともう一つ無意識というものがあります。心理学が明らかにするように無意識の領域のほうが大きく、その意味では無意識にこそ自分の本音が抑え込まれている。フロイトは抑え込んだものが無意識化すると述べています。そしてこの抑え込まれた無意識を知る一番の手立てが夢の解釈だとしています。見た夢を象徴的に解釈していく。もう一つが自由連想で、イメージを自由に忖度せずに物語っていく。ユングはそこに非言語による箱庭や絵などの創作を指摘しています。つまり創作することが自己の無意識を知る唯一の手立てだということです。
 夢は無意識が作り出しています。誰の手も借りず自分で作っているという意味では自分の創造物です。絵を描いたりコラージュを作ったりすることも同じです。ただし無意識を使うことで夢と同じレイヤーの創造性が実現される。別の言い方をすると、意識的に計画的に作るだけでは無意識にアクセスできないということです。無意識や直感を含む創作とその自己分析によって、本当の自分が分かってくる。暗黙の忖度をどう除去し、損得を越えて自分自身を再発見していくか。うまく発見できればそこには、分裂の一切ない「心の静寂」と「安らぎ」があることは間違いありません。
 次回は「本当の自分」に化学反応をもたらす「意味のある素材」について考察していきます。

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『創造的転位 ①』 

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 よく「現実逃避」などと言います。現実の辛さやストレス、受け入れがたいことなどを拒絶し、現実が届かないところへと逃避する。小さなストレスを取るためのプチ逃避は、食事や買い物、好きな音楽や映画、多様な趣味などがあります。これらは健全は逃避で、現実へ戻れるので問題はありません。逃避が問題になるのは、現実に意思が立脚しておらず、非現実的な逃避場所を中心としてしまうことです。そうなれば必ず現実に問題が発生してきます。
 現実を否定して逃避場所へ一歩後退する。つまり中心とする場所を非現実へ転位させる。これを「逃避的転位」と名付けるとします。この「逃避的転位」の最大の問題は中心が後退することです。では後退がだめなら前進ならどうか。中心を現実ではなく前進した先へ置く。そのことで相対的に現実は後ろになり、むしろ逃避場所に降格する。これなら問題はありません。
 現実にたいする前進とはなにか。それは「創造性」へのアクセスです。まだ現実にないものを作り出す。あるいはその可能性に挑戦する。よってただの技術的反復や模倣では現実を後退させるこはできません。それらが創造とは区別される所以はここにあります。創造性には「本質的な個性」と素材(或いはテーマ)との化学反応が必要です。そのためには無意識を含めた「自分自身を知る」ことが必須となる。「本当の自分」が新しいものを作り出そうと挑戦を続ければ、中心が創造性に転位し現実は後退する(創造的転位)。当然現実のストレスも苦悩も遠くに離れてしまう。真の意味での創作が精神的な安定をもたらすことは自明なのです。
 次回は「創造的転位」に必要不可欠な「無意識の認知」について考察していきます。

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