『研究と表現』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 研究とはまだよく分かっていないことを、認識し整理して再現可能なものへ変えていくことです。なので誰もが分からなかったことを、誰にでも分かるようにまとめられた研究は、それだけ価値があることになります。しかしリスクもあり、長い年月をかけても結果が出ない場合もあります。よって保守的な研究者は、分かっていることを集めて整理して研究としがちです。
 分かっていることを並べ替えたり、言い換えたりすることで新しい結果とする。研究であれ表現であれ、この手法は一見新しい結果のように見えます。その性質上、他人にも分かりやすい。しかし実質は「同じ枠内」の変化にすぎません。それに対し本当の研究や表現(創造)は、「枠の外」というまだよく分かっていない領域を探求するものです。もしそれが本物の研究や創造であるか、という区別をつけるとすならば、「枠内」の反復か「枠外」の探求かが一つの基準となります。
 印象派のモネにしても、ウィーン分離派のクリムトにしても、最初はアカデミズムという枠内で表現していました。しかし段々と窮屈になり、枠外を仲間と探求し、表現して自分のスタイルを作り上げました。これは良質な学者の研究と同じです。歴史的に評価されているものは、常に反アカデミズムの性質があり、形骸化した枠を取り壊す重要な役目を担っています。もちろん抵抗する側もいますが、歴史は彼らを必ず退けます。真の研究や創造とは、形骸化したアカデミズムに気づき、その枠の外に広がる可能性を探求することなのです。

AUTOPOIESIS 252/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

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