よく心理学の分野で「自我」という言葉を使います。「自我」とは一般的には自分が「これが自分だ」と思っているところのものを指します。つまり他人は自我ではないし、また無意識にあり把握できないものは自我から排除されています。この意味で「自我」とは他人ではないが、また自分の全体でもない、ということになります。そしてこの自我は始めから先天的にあるものではなく、人間関係によって作られます。
自我は作り物です。しかも人との関係によって自我のあり方が決定される。このことから、自分の親が自我形成の最重要人物であることは疑いがありません。もし自我が不安定である場合、親に原因があると考えるのは自然なことです。親が支配的・圧政的であれば、子供の自我は「不安」と「服従」で構成され、無意識の行動原理となります。また親が子の主体を尊重し、拘束ではなく最終的な自律を目的として接すると、その自我は自由で自律的になります。
親との関係で自我が形成される。それと共に、その後の人間関係によってマイナスがプラスへ転じたり、また逆もあります。分子構造のように、プラスやマイナスの人間関係が複雑に構成され、自我構造が出来上がっている。悪い方法をよしと吹き込む人や、怠惰や堕落を旨とする分子と結合すれば、そのような自我になる。また善悪の判断の重要性や、戦うべき時は逃げないという意志をもった分子と結合すれば、外部に流されない強い自我構造になるでしょう。つまりマイナス分子をできるだけ発見して分離(あるいはプラスと結合)することで、自我構造を安定させることができる。自我は人間関係によってできる分子構造のようなものなのです。
AUTOPOIESIS 251/ illustration and text by : Yasunori Koga
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