『絵の手順について』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 絵をスムーズに発展させる。植物が自然に枝葉を伸ばすように、順を追って段階的に発展させていく。よってそれには「適切な順序」があります。そして人間がやることなので「心理学的な適切さ」とも重なっています。その手順を簡単にいうと、「自分を知り、次に他との比較や咀嚼をしていく」(もちろんこの先もあります)。という流れです。この順序をまもらないと、成長は停滞し、あらゆる問題とともに目的が難航します。
 まず「自分を知る」とは絵でいえば「自分の絵柄を知る」ということです。これは一般には、いろんな人のマネをして作っていくと思われています。もちろん入り口としては良いでしょう。しかし純度100%自分という表現は、他者が入り込まないものです。空のグラスにすべて自分が入っていなければなりません。もし他人の影響をうけても、それを完全に消化しきる(自分にする)必要があります。最初は消化力がないのでそれは難しい。よってまずは、純粋な自分だけを頼りに描いていく。それには排除すべきポイント(長くなるのでここでは触れませんが)がたくさんあります。
 そうしてできた自分のスタイル(順当にいっても数年かかります)は、純粋な自分と呼べるものです。この状態は生まれたての状態で強度はありません。しかし心理的に最も重要な基盤であり宝です。こををないがしろにして人マネばかりやると不安定になります(他のスタイルへの依存は、不安定な自己を作ります)。この重要な自己表現と呼べるスタイルを基にすることで、多様なスタイルとの「比較や咀嚼」が健全な形でできるようになる。胃もたれや嘔吐もないし、自己を乗っ取られる(見失う)こともない。つまり確固とした自己を形成しなければ、他者は存在しないということです。この言い回しは哲学的で分かりにくいところもありますが、絵と哲学と心理学が根本的に重なるところが一番重要であることは、いうまでもありません。この順序をしっかり守ることができれば、どんな芽でも必ず開花するのです。

AUTOPOIESIS 263/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

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