AIの時代、知識を売り物にしていた領域は取って代わられ、技術的なこともほとんどが動画としてネットにアップされています。それらはすでに一般に分配されており、残るはそれらの情報に「良性の化学反応」が起こる「場」や、良い影響を促す「空間」に価値がシフトしていきます。それぞれの種子(情報)に合った適切な土壌(環境)を見つける。そういった「場」は空間だけでなく人間関係を含めたものです。人々はすでにそのことに気づき始めてもいます。
しかしそのような空間は、長い歴史によってできる「肥沃な土壌」であり、「よい空気」のある場所です。それは設計したりマネしたりしてすぐに作れるものではありません。人工的なものは文化的な浅さゆえに、影響は表面的なものに止まります。もちろんただ古くなっただけで、衰退の影響を与える場所もあります。「良性の空間」とは「歴史的な蓄積」と「新しさ」という矛盾が統合した場所に発生します。それは常に変化しながら成熟していく「健全な精神」のような場所です。
AIの時代は瞬間的に必要な情報が得られます。これはつまり情報化時代の終焉ともいえます。みんなが持っているものはゼロになる。この瞬間的な価値の飽和によって、歴史的に蓄積された「良性の空間」や「変化を許容する場」の価値が高まります。多様な知識や経験が一体(種子)となり「健全な発芽」が起こる土壌。それらは一体どこにあるのか。これからの時代は、自分に合った「良性の空間」を発見し、自由に得た知識と経験を「健全な発芽」へと導いていく必要がある。この自己と適切な場の「存在論的な一致」が、次の時代に求められることなのです。
AUTOPOIESIS 261/ illustration and text by : Yasunori Koga
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