よく気象予報などで、観測史上初の出来事などという表現が使われます。つまり「まれに見る出来事」ということです。しかしその観測記録が10年間のデータだったとして、これを100年間のデータに伸ばすと「頻繁に起こる出来事」に過ぎなかった、ということがしばしば起こります。これは短期的な結果と長期的な結果の価値づけに大きな違いが出ることを示しています。つまり逆の結論に至っているということです。
こういったことは、偶然の余地を多く含む気象学や経済学の分野でよく起こると言われています。偶然の余地が入りやすい世界の結果は、短期と長期では反転しやすいということです。ならば人生というほとんど「偶然の連続」で成り立っているような世界では、短期と長期の「価値反転の法則」が大きく横たわっている。極端にいえば短期的に良いと判断したものが、長期的には悪い結果となってしまう。
例えば、ここ30年で社会的に良しとされ、多数が認めた舵取りによって社会は大きく傾きました。この事実はまさに統計学的な逆説を示しています。微分方程式において安全な選択が、長期的な不安定をもたらした。数学者のポアンカレによれば、プロセスを省いて直接未来のゴールに至る能力が「直感」であると言っています。「逆説的な未来を見抜く力」は数学自体にはなく、ポアンカレがいう「直感」が必要になってきます。この「直感」を教育において根本的に鍛えなおすことが、これからの「社会の立て直し」にとって必要不可欠になる。それはほぼ間違いないことなのです。
AUTOPOIESIS 260/ illustration and text by : Yasunori Koga
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