『ゴダールのことば』

古賀ヤスノリ イラスト こがやすのり

 先頃フランス映画界の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール監督がこの世を去りました。世界中の映画ファンが彼の映画を愛していました。わたしもその中の一人で、20代のころに「勝手にしやがれ」を観て以来、ゴダール映画のファンです。ゴダールは映画評論家だったので、彼の書く評論や講義録も映画にまけないくらい私を惹きつけました。カフェでコーヒーを飲みながら彼の哲学を読み耽ったものです。
 そんなゴダールの発言でいまでも頭から離れないものがいつくかあります。その一つに「人々は想像力を委託してしまっている」という発言があります。自分自身の想像力を使い何かを作り出すのではなく、他人に想像力を使ってもらい、作ってもらう状態に甘んじているということです。例えばテレビやネットで価値観や行動規範をもらい、CMを見て刺激を受けて作ってもらったものを買う。想像力を使う余地が格段に減っている。
 全てを委託できるのは楽で便利です。しかし自らの想像力で「自分にしか作り得ないもの」を作るチャンスを無くしてしまう。「自分にしか作り得ないもの」の最たるものが「自分の人生」であることは明らかです。人生を作り上げるために必要な想像力が乏しいと、問題がいろいろと出てきます。また解決も難しくなる。想像力を委託してはならない。このゴダールの言葉は、カフェの雰囲気とともに染みこみ、いまも心に響き続けています。

AUTOPOIESIS 165/ illustration and text by : Yasunori Koga
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