『アムステルダムへ』

古賀ヤスノリ イラスト こがやすのり

 以前、日本からオランダ経由でパリへ行く途中、アムステルダムで足止めされた事があります。濃霧で飛行機が飛べないということでした。次の便が翌日の午後ということで、夜のアムステルダムに放り出されてしまう。一瞬焦りましたが、宿の問題だけクリアすればアムステルダムを観光できるなと、突発的な事件を好意的に受け入れました。結局ホテルを航空会社持ちで探してくれたので、次の日はアムステルダムの街を見てまわり飛行機に乗りました。
 もし予定通りに飛行機が飛んでいたらそれはそれで良かったでしょう。しかし予定外のことが起こったので、私の記憶の中には美しいアムステルダムの街が残っています。街角のデッサンも10枚ほどしました。このように不確定要素は自分を広げ深めてくれる。予定調和の中だけだと安全ではあるが変化や成長に乏しい。言い換えると失敗の経験から新しい芽が生まれ、やがて大きなものへと結実していく。新しいキッカケが化学反応がおこしてくれる。
 アムステルダムの体験は時間にすると僅かなものでした。しかし心理的には色濃く息づいています。しばしば作品のモチーフにも使うほどです。次は時間をしっかり取って行きたい。突発的な事件が起きなければ、たぶん行くことがなかった場所です。自分では選ばなかったであろうものが自分を豊かにする。これは変な話ですが、常に成長のキッカケは自分の外にあるものとの出会いなのかもしれません。

AUTOPOIESIS 164/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』

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