『絵を長く続ける方法⑤』

イラスト こがやすのり Yasunori Koga

 はじめて車を運転するとき、ハンドルを意識し、前方をみてサイドミラーやバックミラー、さらにアクセルとあらゆるところを意識することになります。しかし慣れてくるとなにも意識せずほとんど直感と無意識で操作します。これは泳ぎや歩行なども同じです。もしそうではなく全てに意識をめぐらせていると一日もたないでしょう。すべてを意識し計画的にやることは実は精神的なストレスにもつながってきます。
 絵を描くときも同じことが言えます。すべてを計画的に、あらゆるものを意識して操作的にやることで、その副作用としてのストレスが蓄積します。絵もある程度は泳ぎのように、直感や無意識に任せる部分があるほうがいい。オートマチック化したほうがラクだし“正確”でもある。これは不思議ですが事実です。歩行などを意識して行うと返ってぎこちなくなることと同じです。直感も使って絵を描くには、それなりの訓練が必要ですが、身についてしまえば、意識と無意識のバランスを配分しながら描けるようになってきます。これも「メタ技術」の一つです。
 絵を長く描き続けるために必用なことは、まずは「自分の絵」(自分の世界観)を認識し大事にすることです。それは自分が生きる世界に対する興味にもつながり、自分自身や他人に対する興味ともつながってきます。そこから表現したいものが生まれ、技術や感性を磨くことでスムーズに外へと表現されていきます。そこからさらに「メタ技術」を獲得し「創造の経済性」のもとペース配分をしていく。今回は触れませんでしたが、「自分に合った環境」や「絵の仲間との相性」なども重要な要素です。それらの“バランス”の上に「絵を長く続ける方法」が成立していくのです。

AUTOPOIESIS 234/ illustration and text by : Yasunori Koga
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