『倫理的な免疫』

イラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Kogaイラスト 古賀ヤスノリ Yasunori Koga

 人生には良いことも悪いこともある。とくに人生の前半で悪いことに遭遇してしまうと、以後は悪性のものが入ってこないよう扉を閉じてしまいがちです。しかしそれでは良性のものも入ってこなくなる。さらに完全に閉じると中が悪性化して出られなくなってしまう。なので扉を閉じずにどれだけ悪性のものを退けるかが鍵となってきます。
 そもそも良性と悪性の区別(倫理的判断)がはっきり付いていないと、片方だけを避けていくことはできません。よって良性、悪性ともに分析が必要です。とくに悪性とはなにかをよく知っておく必要があります。あんがいこの悪性の性質を熟知していないことが、悪性を除去できない原因にもなっています。悪性とは人体ならウイルスや病原体であり精神なら悪い考え方です。ここから発展して例えば建物にもシステムにも、料理にも、絵の描き方にも、あらゆるものに悪性(あるいは良性)というものがあります。
 良性と悪性の性質を分析して熟知していく。まずはこの二つの概念を未分化なままにせず、常に免疫のように判別することが大切です。そうすることでその性質が弱体化するような環境をつくれるようにもなる。たとえば悪性のものが入ってきたとしても、長くは生きられない環境をつくる(人体の免疫反応と同じことです)。そうすれば扉を閉じるという過剰防衛を選択せずにすみます。良性のものが入ってこれる風通しのようい環境こそが、健全な環境なのですから。

AUTOPOIESIS 241/ illustration and text by : Yasunori Koga
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