メイクアップ・アーティストのクロエは、異性に無関心な男性と同居して日々を過ごしている。最大の友人はクロネコの「グリグリ」(仏語で灰色)。バカンスのため猫を預けることになり、その後猫が失踪することから物語が展開していく。
主人公クロエは、男女関係という面倒を回避するために、異性に無関心な男性と同居生活を送っている。彼はクロエに対して女性的な興味を一切持っておらず、男女の同居が発展しない曖昧な構造で安定している。その状態を可能にしているのがクロネコ(名前の灰色も曖昧さを表している)の存在。クロエは猫に依存して生きている。しかしその猫がある日行方不明になる。捜索に乗り出すことで知り合いや経験が増えていき、物語の最後にはクロエは少しちがった女性になっている。依存対象から離れることで成長が始まるという、心理学的なプロセスが「パリの日常」で展開されるエスプリの効いた良作。
051「猫が行方不明」 1996年 フランス 監督:セドリック・クラピッシュ
AUTOPOIESIS 249/ illustration and text by : Yasunori Koga
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