『現代哲学』

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「持続性を認めるために、我々は実体という概念を考えだす」
(バートランド・ラッセル)

本書は哲学の入門書として書かれたものであるが、量子力学から相対性理論までもカバーした徹底的なものである。その意味では入門書とは言いにくい。しかし「二人の人が厳密に同じ対象を見ることは決してない」という物理空間と知覚空間の非対称性を、科学的な知識を裏付けながら知るには最適の本である。認識と連合法則の関係。因果論の逆行不可能性。科学的でありながらも、科学批判という「哲学の使命」を貫く論考。人びとが知識として疑いない地平。そのパースペクティブを補正する力は、歪んだは資本主義を正す力を持つ。真に実践的な名著。

book / 012『現代哲学』バートランド・ラッセル: Originally published in 1927
illustration and text by : Yasunori Koga

古賀ヤスノリHP→『Greenn Identity』

『創造する無意識』

古賀ヤスノリ
「芸術は絶えず時代精神の教育に携わる」
(C.G.ユング)

 心理学者ユングが文芸について語った貴重な記録。とくに1922年に行ったスイスのチューリッヒでの講演は、フロイトの芸術論と一線を画す“ユング節”が炸裂している。ユングによれば芸術作品は、個人を超えた「集合的無意識」から生れるもの。よってフロイトの「還元主義的分析」を適用するれば、作品はたちまち個人の領域へ引き戻されてしまう。本来の芸術とは、時代に不足したものを直感した表現であり、個人の意図を超えたものである。よって、芸術は「美」であるだけで事足りるとユングは言う。時代がユングに追いついたことを感じさせる名講演集。

book /011『創造する無意識』C.G.ユング: Originally published in 1930-1985
illustration and text by : Yasunori Koga

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『狭き門』

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「労力に対する報酬という観念は、立派な魂を損なうものよ」
(アンドレ・ジイド)

 この物語の裏にあるのは、自己犠牲という感覚がつくる“結末”であり、それは人生に対する遠慮を超えた「自己放棄」とでも呼べるものです。つまりそこにあるのは、「個人」ではなく完全なる敬虔さ。主人公ジェロームとアリサの可能性は、アリサが持つ純粋な宗教感覚によって阻まれていく。自己犠牲に囚われた個人の姿は、現代においても終わった問題ではないでしょう。ジイドが伝えようとした自己犠牲の結末は、個人の幸福を獲得するためにこそ、必須の認識なのです。物語に凝縮されたテーマが人々を解放する 、憂愁に包まれた名作。

book / 010『狭き門』アンドレ・ジイド: Originally published in 1909
illustration and text by : Yasunori Koga

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『緋色の研究』

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「ぼくにとって、そんなものがいったいなんの役にたつのかな!」
(アーサー・コナン・ドイル)

 誰もが知るシャーロック・ホームズが世に出た第一作目。ストーリー自体は推理ものとして単純明解です。しかし、コナン・ドイルが作り出したシャーロック・ホームズの「情報処理の姿勢」は、情報過多の現代人に一つの指標を与えるもです。彼はあらゆる知識に通じた天才でありながら、その反面、一般人が知る当然の知識(常識)をまったく持っていない。地動説すら知らないという始末。彼は言います。「無用なものを覚えて、役に立つ知識を追い出さないようにするのは、じつにたいせつなことですよ」と。ネット社会での新しい「常識」を予感した、学ぶところの多い娯楽小説です。

book / 009『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル: Originally published in 1887
illustration and text by : Yasunori Koga

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『進化とはなにか』

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「われわれは進化を現場で押さえることができない」
(今西錦司)

 “生物には自然淘汰では説明できない形態がある”という着想から、個体レベルの進化ではなく、種レベルでの進化の発想に行き着く。ダーウィンが唱えた「ランダムな突然変異」による自然選択説に対し、「方向性をもった突然変異」を対置。これは生物に主体をもたせるいわゆる目的論として、自然科学の世界ではタブーとされてきた視点である。さらに進化する種自体が、それを取り巻く一連の「エコシステム」に組み込まれたものであるというホーリズムを展開する。進化論の源流であるラマルクを蘇らせたような、今だ新しい″開放系”種の社会構造論である。

book / 008『進化とはなにか』今西錦司: Originally published in 1976
illustration and text by : Yasunori Koga

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