「芸術は絶えず時代精神の教育に携わる」
(C.G.ユング)
心理学者ユングが文芸について語った貴重な記録。とくに1922年に行ったスイスのチューリッヒでの講演は、フロイトの芸術論と一線を画す“ユング節”が炸裂している。ユングによれば芸術作品は、個人を超えた「集合的無意識」から生れるもの。よってフロイトの「還元主義的分析」を適用するれば、作品はたちまち個人の領域へ引き戻されてしまう。本来の芸術とは、時代に不足したものを直感した表現であり、個人の意図を超えたものである。よって、芸術は「美」であるだけで事足りるとユングは言う。時代がユングに追いついたことを感じさせる名講演集。
book /011『創造する無意識』C.G.ユング: Originally published in 1930-1985
illustration and text by : Yasunori Koga