自分を守るために作り出した幻想に逃げているあいだは、現実を受け入れることが出来ません。イソップのキツネは上にあった葡萄を下にみることで一時的な危機を回避しました。でもそれでは葡萄を手にすることは永遠にできません。葡萄を手にするには、幻想に助けを求めるのではなく、自分が自分を助けるという前提で考えなければなりません。
キツネは届かないところにある(現状では上にあって難しそうな)葡萄を下に見ることで難を逃れました。しかしそのとこで、葡萄は現実の世界から幻想の世界へと追いやられてしまった。自ら手に取ることの出来ない世界へと欲しいものを追いやってしまったのです。自信がないと挑戦するまえに先回りして、欲しいものを不可能な世界へ追いやってしまう。キツネはちょとした困難にたいして価値をひっくり返して逃げるという癖に気づかなければなりません。
葡萄に届かないなら、その差を埋める方法を考えてみよう。長い枝をもってきて振り落とす。梯子のようなものを作る。あるいは誰かと協力する。とにかく「いまの自分ではまだ無理だ」という事実の受け入れが土台となって知恵が働きだす。あるいは訓練などで力を身につける。そんなこと必要ないという思いに逃げ込めば、すべてが幻想(不可能)になる。結局キツネは、美味しそうな葡萄のありかを鳥におしえ、手伝ってもらい一緒に仲良く食べたのでした。おしまい。
AUTOPOIESIS 129/ illustration and text by : Yasunori Koga
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