人間には精神と身体と二つがある。そしてどちらも健康であることが望ましい。もし精神的に健康でも不健康な生活を送れば病気になるし、肉体的に健康でも精神が不健康であれば心の病気になってしまいます。一般的には身体的な健康を保つほうが簡単で、精神的な健康は見えない分コントロールが難しい。とにかく二つのバランスが大切であることは間違いありません。
精神は見えないもので、身体は見えるもの。言い換えると「数えられないもの」と「数えられるもの」です。後者の「数えられるもの」についての情報は溢れています。しかもある程度は正確です。問題は「数えられないもの」で、この領域をほとんどないものとして生活している人すらいます。つまりただ生活しているだけではその存在が抜け落ちてしまうのが、非物質の概念(精神)であり、それを認識するには“知的な理解”が必要です。
精神のような「数えられない」非物質の価値を日常で無視すると、当然ながら精神は不安定になっていきます。つまり数量化できるものだけを重要視する価値観が、精神の不安定をまねく原因の一つである。これは誰にでも分かる理屈です。よって全体的なバランスを回復するために、数量化できないものの価値を理解する必要があります。それは美意識や倫理観、心や思いやりといった人間に普遍的なものです。これら非物質的な価値を、物質的な価値と同等に扱うこと。これは他の動物には決してできない、人間だけが取りえる高次元のつり合いなのです。
AUTOPOIESIS 182/ illustration and text by : Yasunori Koga
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