蝶になる前は必ずサナギになる。サナギの状態を拒めば芋虫は蝶になれない。芋虫という栄養摂取に特化した形から、空を飛ぶ複雑な蝶の形へと変わるには、形の「抜本的な改造」が必要です。そのためにあらゆるものを犠牲にして、固い殻を作ってそのなかで形を組み替える。このエネルギーを得るために芋虫は栄誉摂取を行なっていたことになります。
芋虫の世界からすると、全く動かないサナギは批判に値する振る舞いでしょう。よってサナギを批判し、中にいるものを外に出そうと考える。芋虫にとってはそれが正しいことです。しかし物事は次のプロセスへ進むと、以前の価値観が全く通用しない世界観になっているものです。よってまだ形が定まらないときに、サナギの殻を破ると大変なことになります。出来上がるまでは何があってもサナギの殻を割ってはならない。
人間もサナギの状態が必要な時があります。それは現在とまったく別の次元へと成長する時です。抜本的な変化の時には、サナギのプロセスが必要になる。そこは今までの価値観を遮断した「守られた空間」であり、組み替えが終わるまでのシェルターとなる場所です。この中にいる間は「引きこもらずに外へ出ろ」という言葉は聞いてはならない。我慢できずに連れ戻されればまた芋虫の世界が続く。蝶になるにはサナギの状態を受け入れ、自然に殻が破れるまで、多様な組み替えを繰り返す必要があるのです。
AUTOPOIESIS 203/ illustration and text by : Yasunori Koga
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