アイデンティティとは発達心理学者エリクソンの言葉で、自己が社会的な役割や外部との関係において作られる安定状態を指します。これはつまり自己単独でのあり方ではなく、社会との関係的な安定を意味しています。この意味では人間関係もアイデンティティに関わっているし仕事や趣味なども関わっている。よって関係先である環境が変化するとアイデンティティが揺らぐということも起こってきます。
例えば社会の価値観が大きく変わることでアイデンティティが揺らぐ。それまで一つの会社で長く働くことが美徳とされてきた価値観が、働き方の多様性で激変しました。あるいはネットの発達で暗記科目に時間をさく意味が窮地に追い込まれています。またデジタルで作り出す絵やデザインがAIで瞬時に作り出され、制作者はこれまでの意味を問われています。このような変化はアイデンティティを揺るがす要因となります。
アイデンティティを形成していた環境が変化したとき、その変化に適応できれば新たなバランスを獲得できます。そのためには「自分が変わる」必要がある。もし過去のアイデンティティに固執していれば変われず、不安定化に入ります。この変化への適応に大切なことは「意味的な適応」です。これまでの意味とこれからの意味を考える。それが理解に達した時に進化(変化)を自らに許すことができる。これは言葉による知的理解です。自己の価値観の揺らぎは進化の前触れであり、それを意味的に理解することで、新しいアイデンティティは獲得されていくのです。
AUTOPOIESIS 268/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリ サイト→『Green Identity』