マラソンランナーはペース配分をして走ります。初めから全力疾走などしません。配分という変化を許容しながら、ペースをしっかり守って走ることで長距離を走り続けることができます。ペースが乱れると、いくらプロのランナーでも最後まで走り続けられないでしょう。そう考えると「エネルギーの加減」と同時に「一定のペースを維持すること」が思いのほか大事であることが分かってきます。“より遠くまで行く”には必須だといってもよいでしょう。
絵で言えば「制作ペース」の維持が思われている以上に大切です。好き勝手よりも、ペースを固定する(決める)ほうが継続しやすいのは、一つは安定しやすいからです。たとえば週2回、1時間の制作時間でペースを作る。もちろんこれを守るにはある程度の自制が必要なので、最初は外部からの強制(誰かと一緒に描くなど)が有効です。この固定したリズムの上で自由に技術を加減していく。音楽でいえばリズムの上にメロディーを奏でるようなものです。「無変化の上を変化させる」という矛盾構造が、強い相補性による推進力を作り出します。
一定の制作ペースを守りながら「メタ技術」の立ち位置で「創造の経済性」による「抑制と配分」を行っていく。制作ペースを守ることで、安定がうまれ、安定しているからこそ、自由に振る舞うことができるようになります。「創造の経済性」による「精神的なロスの回避」は、集中力を高めることにもつながる。この「精神的なロスの回避」に役立つことがもう一つあります。それは「直感」を使うことです。最後はこの「直感」を使うことについて考えてみたいと思います。
AUTOPOIESIS 233/ illustration and text by : Yasunori Koga
こがやすのり サイト→『Green Identity』