『ドラゴン・タトゥーの女』

古賀ヤスノリ イラスト

 この映画の主人公はジャーナリストである。そして物語も彼を軸として、謎の失踪事件を追うかたちで展開していく。しかしタイトルが示すように、内容がどうであれこの映画は“ ドラゴン・タトゥーの女 ”なのである。その圧倒的な“ 個性 ”は、あらゆるタブーを超えて純粋の極みに達している。血塗られた一族の話、強烈な暴力描写、巧みなストーリー展開。これらのインパクトを すべて忘れさせる女。ヘビーなサスペンスではあるが、ダークなラブストーリーとして観ることもできる「ドラゴン・タトゥーの女」である。

vol. 017 「ドラゴン・タトゥーの女」 2011年 アメリカ 158分 監督:デヴィッド・フィンチャー
illustration and text by : Yasunori Koga

★古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

『地下鉄のザジ』

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ザジの視点で描かれたパリ。愛すべきキャラクターたちがドタバタを繰り広げ、世にもシュールな世界を演出する。 現実でも非現実でもないこの世界は、現代が失いかけた「遊び」の世界。ザジの毒舌に翻弄されながらも、パリの オトナたちは活気に満ちた人間味をあらわにしていく。この映画が世界中で愛されるのは、オトナたちが子供心を揺さぶられるからなのでしょう。

vol. 016 「地下鉄のザジ」 1960年 フランス 93分 監督:ルイ・マル
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『ノーカントリー』

 枯れた大地の広がるメキシコ国境地帯。そこで展開される時を越えた追跡劇。
公開当時に話題となった情なき殺人鬼は、アメリカ先住民のヘアースタイル。他の主要人物はみなカウボーイハットという出で立ちだ。この縮図は故郷を奪われた者の復讐劇という テーマを匂わせている。監督のコーエン兄弟がユダヤ系(ユダヤ人は故郷を喪失している)ということもあり、この物語にある種の共感をもって演出したのかもしれない。撮影監督はコーエン作品の常連、ロジャー・ディーキンス。彼の美しい映像が、あまりにも冷たい物語を芸術にまで高めている。

vol. 015 「ノーカントリー」 2007年 アメリカ 122分 監督:ジョエル/イーサン・コーエン
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『ストーカー』

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 「ゾーン」と呼ばれる立ち入り禁止区域。そこには願いが叶うとされる部屋がある。案内人”ストーカー”は、作家と科学者を連れて「ゾーン」へ向かう。しかし、政府の厳重な警備と「ゾーン」そのものの性質により事態は予測不能な方向へと発展する。
「惑星ソラリス」に続くタルコフスキー監督のSF映画。しかしここにSFらしき風景は微塵もない。「ゾーン」は美しい風景によって表現され、その美しさは映画史に残るほどのものである。この「ゾーン」は一体なにを意味しているのか。立ち入り禁止区域が存在する日本にとって、今や無視できない映画である。

vol. 014 「ストーカー」 1979年 旧ソビエト 164分 監督:アンドレイ・タルコフスキー
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『軽蔑』

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 難解と言われるゴダールの映画。しかしこの「軽蔑」は比較的にシンプルでわかりやすい。ある脚本家が映画製作に携わり、 その過程で精神が崩れはじめる。それは私生活へも影響を及ぼしていく。ゴダールの当時の私生活がそのまま演出に活かされている。その意味では生々しい映画だ。映画の導入部分で引用される「映画とは欲望がつくる 世界の視覚化である」という評論家アンドレ・バザンの言葉がこの映画の全てである。映画製作に対する”代償”を描いた傑作。

vol. 013 「軽蔑」 1963年 フランス・イタリア 102分 監督:ジャン=リュック・ゴダール
illustration and text by : Yasunori Koga

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