『詩人の血』

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 『詩人の血』はフランスの詩人、ジャン・コクトーが最初に撮った映画である。制作されたのは1930年というから80年以上も前だ。もちろん現代の映画からすれば、映像はモノクロで画質も荒い。しかし内容は素晴らしい。詩人の言葉を散りばめたような詩的映像の連続である。 一般的な映画にあるような、明快なストーリーはここにはなく、ただ詩人が自分の想像力を垣間見るというもの。コクトーも自ら、非現実の記録映画だと表現している。
人間のように喋り出す彫刻は詩人にこう告げる、「お入りなさい、あなたが創造した鏡のなかへ」「それはあなたの財産」。想像力が詩人にとって如何なるものなのか。それを映画によって示そうとするコクトーは、やはり規格外の詩人である。

vol. 025 「詩人の血」 1930年 フランス 50分 監督 ジャン・コクトー
illustration and text by : Yasunori Koga

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『ミラーズ・クロッシング』

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 禁酒法時代のマフィアの抗争を描いた、コーエン兄弟初期の傑作。 対立するアイルランド系マフィアとイタリア系マフィア。その間を飄々と渡り歩く主人公トム。そのクールさこそがこの映画の売りである。
時代を意識した世界観、特に美術が素晴らしい。曲者ぞろいの人間関係も実に見事に描かれている。 広角レンズで人物にズームするスタイルは、ジャン=ピエール・ジュネ がこの映画でヒントを得たのではあるまいか。 それにしても内容が黒澤明の「用心棒」にそっくりである。 コーエン兄弟なりのオマージュであることは、いまさら疑うまでもないだろう。

vol. 024 「ミラーズ・クロッシング」 1990年 アメリカ 115分 監督 ジョエル・コーエン
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『エレメント・オブ・クライム』

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 犯罪捜査のため、カイロからヨーロッパへと赴いたフィッシャー。彼は、警察学校の恩師オズボーンが記した「犯罪の原理」の方法をもとに捜査を始める。その捜査方法とは、犯罪者の心理状態に同化するという危険な手法であった。
全編セピア調の画面。ビザ―ルでマニアックな演出。人間の暗部を吐露したテーマ。一般的な映画とは一線を画すこれらの手法は、先にも後にもこの映画でしか見られない(表面的な模倣者はいたが)。監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー。彼が28歳の若さで撮ったのがこの映画だ。知性と狂気が高密度に結晶化した恐るべき傑作。

vol. 023 「エレメント・オブ・クライム」 1984年 デンマーク 100分 監督 ラース・フォン・トリアー
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『パードレ・パドローネ』

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 厳格な父の圧政によって抑圧状態にあった少年。かれは小学校から連れ出され羊飼いにさせられる。文盲のまま育った主人公は、やがて徴兵によって父親から解放される。そして言葉をむさぼるように覚えて行くのであった。
これはイタリアの言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝である。つまり主人公は文盲から言語学者になる! 家庭環境という前提条件から個人の人生を勝ち取るドラマ。これは全ての人間にとって共通のテーマである。そんな普遍的な物語を、ダヴィアーニ兄弟がザラついた質感とユーモアをもって描き出す。オイディプス神話の流れに乗って、ガヴィーノ少年は言語学者へと進んでゆく。まさに傑作である。

vol. 022 「パードレ・パドローネ」 1977年 イタリア 114分 監督 パオロ、ビットリオ・タヴィアーニ
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『ライフ イズ ベースボール』

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 劇作家である主人公が勝負をかけた舞台。その初日に”皆殺しの天使”と呼ばれる批評家がやってくる。 しかもその日は、崇拝するレッドソックスのワールドチャンピオンがかかった日。彼は舞台の初日から逃避するように、バーの野球中継に一喜一憂するのだが・・。
主人公にとっての濃密な一日が、ゆったりとした流れで描かれる。個性的な面々のクセのある演技。暗喩にみちた演出。そしてユーモアのセンス。そのどれもが素晴らしい。脚本はノーベル文学賞候補常連のドン・デリーロ。音楽はヨ・ラ・テンゴ。主演はマイケル・ キートンということで愛すべき一本に仕上がっている。ここにはウェイン・ワンの『スモーク』やロン・ハワードの『ザ・ペーパー』と同質の世界がある。

vol. 021 「ライフ イズ ベースボール」 2005年 アメリカ 83分 監督マイケル・ホフマン
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