主人公はニューヨークでは名の知れた劇作家。その才能を認められてハリウッドへ呼ばれる。しかしそこで命じられたのは、「B級レスリング映画」の脚本だった。理想を捨てるよう迫られた主人公は、脚本執筆が困難となってしまう。そして奇妙な事件に巻き込まれていくのである。
環境の変化は、作家の変化を要求する。郷に入れば郷に従えなのか、 それとも理想に固執すべきなのか。それともこの二つを総合し、解決することは出来るのか。主人公の行き場のない葛藤は、やがて一つのストーリーを作り出していく。作家の想像力とはいかなるものか。それを描いたのが『バートン・フィンク』なのではないだろうか。
vol. 026 「バートン・フィンク」 1991年 アメリカ 116分 監督 ジョエル・コーエン
illustration and text by : Yasunori Koga