進化生物学者のスティーヴン・ジェイ・グールドという人が、偶発性こそが生物進化の鍵だと著書で述べています。だから進化を科学的に予測などできないとも。振り返ったときにそれは見えるということです。つまり「ああすればこうなる」という「決定論」を採用して進む限り、進化できないということ。ここで現代の大きな問題が浮かび上がります。テクノロジーの最先端であるパソコンやインターネットの中は、すべて決定論で出来ています。突発的な偶然など起こりません。ゆえに、人間がパソコンやネットに依存している限り、進化できないことになります。このような状況に対して、偶発性を作り出すには、パソコンもスマホも放りだして進まなければなりません。現在の状況を考えると、そのようなことは無理だと思われます。しかし進化とは前段階が死ぬことでもある。しかし人間はそのような社会的破堤を回避しようとする。ここに最先端の技術が進化を阻害するというパラドクスがあります。その先にゆくことは(たとえば社会がパソコンを棄てることは)予測不能な事態に飛び込むことです。進化とは後から振り返ったときにしか見えないもの。つまり前が見えないまま進むことが進化だということでしょう。もちろんただ単にパソコンを棄てただけでは、進化など出来ないことは自明のことでしょう。
AUTOPOIESIS 0008./ illustration and text by : Yasunori Koga
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