『自己とフィードバック』

古賀ヤスノリ イラスト

 河合隼雄さんの本を読んでいると、エリクソンの話しが少し出ていた。アイデンティティということばを生み出したエリクソン曰く、自己と社会性が調和したところにアイデンティティの確立があるという。しかし青年期に自己のディフュージョン(同一性の拡散)が起こると、大人になってからアイデンティティを確立しにくくなるということだ。このディフュージョンはなぜ起こるのか。自分なりに推測してみて思うことは、やはり自我の過剰防衛による「反ホメオスタシス構造」(反サイバネティックス構造)が内部に出来上がるからではないだろうか。自己同一性を維持するためには、外部変化に流されない一定の舵取りが必要である。つまりフィードバック回路がないと拡散してしまう。しかし過剰防衛で外部情報を遮断してしまえば、フィードバックを取り入れることができない。ここにディフュージョンが起こる。端的にいえば、親が不必要な厳しさで子供に接するとき、子どもは過剰防衛的に育つ。心的なフィードバック回路が未発達のまま社会に接するとディフュージョンが起こってしまう。ここに「自己と社会性の調和」(アイデンティティの確立)が難しくなる原因があるのではないだろうか。 

AUTOPOIESIS 0009./ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

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