『集団心理の壁』

 個人であれば自分一人が枠であり、集団になれば集団の枠があります。集団の中で個人のアウトラインが明瞭に意識されることはまれで、集団心理とはそれほど内部の人々の「個人的な枠」を消し去るものです。
 たとえば家族という集団、さらにその集合体である地域、街、国家など、より大きな枠へと進んでも、そこには必ず枠内を拘束する集団心理があります。集団心理はつねに、「内側」という意識に支えられていて、その意味では「外側」との関係によって成立している。国家が他の国家によって成立することは当然のことです。よって内部の結束をより強固なものにするためには、外部(あるいは敵)を作り出す必要があります。子供のいじめから国家の舵取りまで、この原理による振る舞いは、いたるところで見られるものです。
 しかしこのような外部依存型の「閉じた構造」は、すでに崩壊の始まりを表していると言えます。物理学の視点で見れば、内部のエントロピーは増大の一途をたどる。閉鎖した集団が、外に敵を見出して硬直化するというプロセスです。その先に幸福が待っていたためしは、歴史上いまだかつてありません。しかし人間は、集団の力を利用せずに文明を維持することはできない。ここに文明のパラドクスと、超えるべき指標があるように思います。
 
AUTOPOIESIS 0007./ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

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