そぎ落とされた台詞。風景と化した兵士たち。戦場の限界状況が、新しい角度からダイレクトに伝わってくる。歴史的な事実を「人命」という視点で描いた本作は、ノーランがリスペクトする「シンレッドライン」のような哲学的な表現をあえて抑え、テオ・アンゲロプロスのよな「史実ありのまま」を現象学的に(または詩的に)映し出そうとする。ヒットメーカーならではのドラマも盛り込まれていて、評論家から一般までが一定の評価を下すのではないか。久々に映画界に新しい形式をもたらした“映像が語る”一作。
vol. 042 「ダンケルク」 2017年 イギリス、オランダ、フランス、アメリカ 93分監督 クリストファー・ノーラン
illustration and text by : Yasunori Koga