『価値の急降下』

古賀ヤスノリ イラスト

 長年追い求め労力も費やしてきた事柄が、ある日色あせて何の価値も感じなくなる。このようなことが往々にして起こります。なぜこういった価値の急下落が起こるのでしょうか。そもそも熱っぽく何かを求める対象は、「心の穴を埋める」ような要素である事が多い。心の不足を補うような対象であるがゆえに、熱心にそれを追い求める。しかし不足を自分自身で(たとえば精神的な成熟によって)解消してしまうと、追い求めていた対象の価値が急下落する。このパターンはかなりあると思われます。もう一つのパターンは、社会の変容によってその価値が下落するというものです。これはそもそも相対価値を基準として追いかけるので、周囲の関係によって価値が変動せざるを得なくなります。こちらの方は永遠に価値の変動と追跡を繰り返すので、満足に行き着くことがありません。前者の場合の価値下落は、その時の寂しさはあるけれど、結果的には良い下落だと思われます。そもそも価値というものは、対象自体にあるのではなく、人間側の心の変容にある。だからこそ、お金や数字で一般化されたものでさえ、価値が下落してしまうのでしょう。

 

AUTOPOIESIS 0015./ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

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