絵を描くときに「自分が好きな絵」と「他人に気に入られる絵」のどちらを描くかで悩んでいるひとが多くいます。この二つの概念は相関していて、片方を上げるともう片方が下がるといった具合に矛盾している。ゆえにどちらを取るか決めかねている人には悩ましい状態となっています。これは煎じ詰めると、自分の納得を取るか、他人からの評価を取るかに還元されます。
しかしこの二つの方向は、片方へ行き過ぎると問題が発生してきます。自分の感情だけを追求し、だれもまったく理解できない世界を表しても意味がない。逆に他人に気に入られるようとしすぎると、自分を見失いバランスを崩すことになります。絵を描いていく上で、この二つの概念は分裂させずに統合する必要がある。二つを統合した世界では、どちらも等価であり相関もしていません。よって矛盾もおこらない。
二つの矛盾が起こらない世界で絵を描く。この世界を「純粋空間」と呼ぶならば、この「純粋空間」をどのように確保するかが大事になってきます。これは技術や知識とは別種の、絵を描くときの重要事項です。矛盾を統合できるのはこの「純粋空間」しかないく、この空間は方法論では生まれません。相反する二つの価値観の上位にある「純粋空間」は、経験でしか会得できない。つまり「純粋空間」が存在する場所で「経験的に理解する」ことで、初めて獲得されるのです。
AUTOPOIESIS 171/ illustration and text by : Yasunori Koga
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