『ムダを許容する』

イラスト こがやすのり 古賀ヤスノリ

 機械に油をさすと円滑に稼働するという現象があります。たとえば自転車のチェーンに油をさすと急に進みが早くなり運転もらくになる。これは部品と部品の間の摩擦を軽減することで全体が円滑に稼働する現象です。つまり各要素の間に隙間を作るということ。この隙間を設けておかないと複数の要素からなるシステムは必ず問題が発生してくる。
 隙間とは空白であり、重要な役割を担っている格パーツからすると無意味な存在です。それ自体では価値がなく無駄なものと判断される。もちろん数値化もできず重要視することも難しい。しかしその無意味で価値がないものが存在することで、すべてが健全に機能しだす。つまり必要だと思われているものだけで構成されたシステムは、非効率な構造であり未来の破堤を示しているということです。
 これは機械に限らず、人間関係や考え方に至るまで原理は同じです。必要な要素だけで構成された系は非効率と破堤へと向かう。たとえば強固な村社会(似たもの同士)のシステムだと、異質な存在(無駄)は排除されてしまう。しかしこの同質維持の傾向が非効率と未来の破堤をつくる。思考も新しいものを取り込まないと同じことになる。つまり部品として役に立たないからこそ、空白の存在は“全体にとって”不可欠な要素となる。この無駄を許容できるシステムこそが健全なシステムなのです。

AUTOPOIESIS 210/ illustration and text by : Yasunori Koga
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