『個性と運命』②

 他人のほうが自分の個性を理解している。この視点は「自分のことは自分が一番分かっている」という考え方からすれば受け入れ難いものです。一番近くにいる人が一番良く見えているという理屈です。しかし、たとえばビルの入り口に立つとビル全体のデザインは見えなくなる。ましてやビルの内部に入り込めばなおさら何も見えなくなります。
 距離が近いと全体的な理解が難しくなる。これは物質に限らず組織や会社のようなシステムも同じで、中に入り込み同化すれば何も見えなくなる。全体とは「外部から見る」ことでしかつかめないものです。つまり全体を把握するには、対象との「適切な距離」が不可欠になります。この距離なくして全体の理解はありえません。
 自分の個性や人格も同じく、自分に対する「適切な距離」によってはじめて把握が可能となります。「外部から見る」ことによってはじめて全体がハッキリする。逆にいえば内部から自分の全体を把握することは決してできない。であるがゆえに、他人の意見に耳を傾け、ときに習慣とは違うことにも挑戦して、その結果を自分の「新しいデータ」として眺めてみる。自分の個性は自分自身から脱出することで、はじめて見えてくるものなのです。

AUTOPOIESIS 216/ illustration and text by : Yasunori Koga
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