実在のプロボクサー、ジェイク・ラモッタの半生を描いたマーティン・スコッセッシ監督の代表作。 まず、この映画のどこが面白いのかといえば、やはりラモッタ役のロバート・デ・ニーロと弟役のジョー・ペシのエネルギーに満ちた演技である。 特にデ・ニーロは役作りのために25㎏も太り、自らを巨漢にしてしまうほどの凝りよう。そんな映画がつまらない訳がない。 カラーの時代に意図して撮られたモノクローム。これが驚くほど美しい。名カメラマン、マイケル・チャップマンのベストワークでしょう。
スコセッシ監督は主人公をプロボクサーとしてではなく、一人の人間という視点で描き切っている。 人が避けがたい人生の流れのなかで、どのようにもがき、そしてどのように現実を受け入れていくのか。 ボクシングシーンの切れ味するどい編集も見逃せない。
「レイジング・ブル」 1980年 アメリカ 129分 監督:マーティン・スコセッシ
illustration and text by : Yasunori Koga