『構造を捨てる』

古賀ヤスノリ イラスト

 古い自分を棄てないかぎり新しい自分にはなれない。これは当然のことでしょう。この「弁証法的な進化」を繰り返すことが、大人になるということです。しかし社会が要求してくることは、現状を棄てるどころか現状の維持、拡大です。多くの人々でつくる利益構造や組織防衛のシステムは、革命や刷新を拒むという抗原抗体反応を内在しています。作家フィリップ・K・ディックは『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』において、現状維持で満足する状態を、リスの踏み車に例えてみせました。リスはいくら走っても進まないが楽しいらしいのだと。新しい自分になるとは、古い自分を棄てることである。リスが新しい状況を手にするには、踏み車を棄てなければなりません。現代人にとっての踏み車とは一体なにか。その踏み車を棄てて歩き出す人が、これから現れる新人類なのでしょう。もちろんアンシャンレジームからは目障りな革命者と見られるかもわからない。しかし当事者たちはそんな大袈裟なことではないと思うにちがいありません。この落差こそが進化の証なのでしょう。
 

AUTOPOIESIS 0011./ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

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