『個性とは何か』⑥

古賀ヤスノリ イラスト こがやすのり

 個性とは無形にして永遠普遍の本質である。この無形なる普遍的な本質を、もう一人の古代ギリシャの哲学者、プラトンは「イデア」とよびました。プラトンはキリンならキリンの、カバならカバの「イデア」があると言います。それぞれにイデアがあるからこそ、一目見てキリンやカバと分かる。つまりこれが個性の認識にあたるものです。
 群集の中にある友人の顔を一瞬で見分ける力。あるいは作品を見てだれのものかが瞬時に分かる力。これらは対象となる個性を把握しているからこそ生まれるものです。表面的なものではなく、無形の普遍的な「本質」を直観的に理解しているからこそ可能な認識なのです。
 個性とは誰の中にもあるものです。たとえ表面的には一般化していても、それ以上分割できないアトムのように、何者にも破壊できないものとして、無形のイデアのように必ず存在しているのです。
 社会は還元主義を採用して動いています。すべてを数値管理し、科学は分類と体系化によって成立している。よって人間もそのように扱われてしまいます。そうすると個性は見えなくなってしまう。しかし、個性は無形の普遍的な本質であり、究極的には破壊できないのです。
 「私には個性がない」という人もいます。しかし本当にそうでしょうか。還元主義的な一般化によって見えなくなっているだけではないでしょうか。個性は、いつものその人の動きの中に、発するものの中に、生み出すものの中に、常に存在しています。無形にして永遠普遍なる個性を消滅させることは、決して出来ないのです。

AUTOPOIESIS 0098/ illustration and text by : Yasunori Koga
古賀ヤスノリのHP→『Green Identity』

Scroll to top