「(敵は)われわれ母性文化の本城である『家』の中にはいりこんでいる」
(河合隼雄)
臨床心理学者が、対人恐怖症の人々と接するうちに発見した母性文化。その見えない構造にメスを入れた画期的な論考。母性原理は、生み育てるもの。それに対する否定的な側面は、呑み込み、しがみつき、死に至らしめる。そのような混沌を、全てを融合し未分化な状態を作り出す“グレートマザー”に見る。その内部では全てが許される反面、自我の確立や善悪判断を失う。そのような「融合」ではなく、「自立」に基づいて他者と新しい関係を結ぶ必要がある。自我を飲み込むグレートマザーとの戦い、日本の現状に対する決定的な処方となりうる一冊。
book / 014『母性社会日本の病理』河合隼雄: Originally published in 1976
illustration and text by : Yasunori Koga