「真の美は、不完全を心の中で完全なものにする人だけが発見することができる」
(岡倉天心)
岡倉天心が、明治三十九年にニューヨークで出版した「茶の湯」の真髄。薬用から飲料へ。八世紀の中国で娯楽から詩へと発展した茶は、十五世紀の日本において茶道へとたかめられた。それは道教であり善の儀式でもある。そこに関わる茶人や数寄屋、花たちはすべて“美との一体感”のために存在する。はかなさ、未完の美、非対称、非反復性、どれもが「相対の美学」を構成する。茶道は、日常のむなくるしい諸事情の中にある美を崇拝する儀式。日本が世界に誇るものは産業などではない。茶の湯の精神なのだ。
book / 015『茶の本』岡倉天心: Originally published in 1906
illustration and text by : Yasunori Koga