イギリスの哲学者バートランド・ラッセルという人が『哲学入門』という本を書いています。もう一つ『現代哲学』という本もありますが、どちらも哲学の入門書として書かれたものです。しかし、その内容は明らかに哲学書そのものです。特に『現代哲学』は入門書としては難しすぎる内容です(私の主観ですが、プラトンやデカルトより難しい)。しかしこれはとても面白いことではないでしょうか。入門書とは本格的な哲学書など歯が立たない人が読む本です。しかしその入門書が本格的な哲学書になっている。これは一種のパラドクスでしょう。しかしテーマである「哲学」の性質上、「物事の本質を扱う」という‟哲学的形式”を外すことができません。なので入門書も‟哲学的形式”で書かれることになります。当然バートランド・ラッセルのような正真正銘の哲学者が‟哲学的形式”を外すはずがありません。よってバートランド・ラッセルの『哲学入門』という哲学書が生まれることになります。このような本が真の哲学の入門書だとするならば、それ以外の本(哲学書でない入門書)は入門書にあらずということになる。「哲学の入門書=哲学書」という等式。ここであらためて気付くことは、‟哲学書とは哲学の入門書である”ということです。哲学書とは、著者と共に哲学を探究する書物なのですから。
AUTOPOIESIS 0013./ illustration and text by : Yasunori Koga
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